虐待認定に対する専門職としての職責についての表明

2024年3月7日の報道において以下の内容が報じられました。

「神戸市の精神科病院で、看護師が患者を突き飛ばすなどの暴行を加え、市が虐待行為として認定していたことが分かりました。
 神戸市によると、おととし(2022年)6月、西区の精神科病院「関西青少年サナトリューム」で、院内でつばを吐いてきた患者を看護師が床に突き飛ばして転倒させ、押さえつけました。
 その後、患者の腕をつかんで引っ張りあげ、腕を離して転倒させたということです。患者にケガはありませんでした。暴行が加えられた当時、周りには複数人の看護師がいましたが、制止する人はいなかったということも問題視されました。
 病院から報告を受けた市は聞き取り調査を行い、暴行の内容が人権を侵害したものだとして、虐待行為と認め、改善計画の提出を求めたということです。
 病院側は市に研修を徹底する旨の改善計画を提出しています。」※参考)関西テレビ3月7日 https://news.yahoo.co.jp/articles/c04336e085a84b35d7f02a7cde163000ea06ae04
神戸新聞NEXThttps://www.kobe-np.co.jp/news/society/202403/0017406134.shtml

精神保健福祉士は対人援助職として、様々な所属機関で業務に従事しています。支援を提供する際には、常に不適切な対応になっていないか私たち自身が振り返る機会を持つことや、所属する者同士で確認する必要があります。
潜在化する不適切な対応は、いずれは虐待や事件となり、支援対象者のみならず、支援者自身も大きく傷つくことになります。

私たち、兵庫県精神保健福祉士福祉士協会は、職能団体として、今後も人権に関する出来事を注視し続けてまいります。また、今一度このような不適切な行為、虐待、事件を起こさないために、決して他人事ではなく、ひとりひとりができることを会員や関係機関の皆様と考え、人権を尊重した支援を進めていきたいと考えます。

2024年4月24日
一般社団法人 兵庫県精神保健福祉士協会

精神科病院の医療従事者による入院患者への
集団虐待事件に関する声明

 
神戸市西区の、医療法人財団兵庫錦秀会神出病院で看護師らによる入院患者に対する筆舌に尽くしがたい虐待事件が起きました。兵庫県精神保健福祉士協会は精神障害のある方々の人権を守る職能団体として、憤りを感じざるを得ません。事件の詳細は今後の捜査を待つことになりますが、事件の全容が明らかにされることはもちろんのこと、被害を受けた精神障害のある方々はもとより、現在も神出病院に入院中のすべての方々に対し、迅速かつ適切な医療とケアがなされることを強く願います。そして、神出病院への厳正なる処分と共に精神科医療の適正化を強く求めるものです。

これまでも兵庫県内において、度々医療従事者による精神障害者の人権を大きく侵害する事件が起こりました。今回の神出病院における事件は、精神医療に携わるすべての関係者が過去の反省を全く生かす事ができなかったことの証左であります。精神障害者の権利を擁護する立場にある当協会としましても痛恨の極みの事件であり、決してその責任を免じられるものではないと考えます。

今回の事件は、当該加害者が別件で逮捕され、捜査上で副次的に発覚したという特殊な経過を辿っています。長期間に渡り、繰り返されていた虐待は、病院内の誰からも告発されることなく、精神医療審査会にも届かず、行政機関による実地指導でも見出すことができませんでした。被害者の恐怖と苦痛、絶望を思うとあまりの残酷さに言葉を失います。これは現行の権利擁護システムが、実効性のあるものとして機能していないということにほかなりません。

神出病院は、入院患者に日常的な虐待が行われ、長期間にわたり看過されていたという現実を重く受け止め、行政機関を中心とした第三者機関による厳正な調査を受け、真相究明と再発の防止に全力を投じるべきであると考えます。何よりも、職員個人の資質の問題にすり替えることなく、明らかになった真相を真摯に受け止め、入院患者に対する適切な権利擁護システムの確立に向け、猛省に基づく抜本的改善が行われていくことを強く願います。

また、我々は監督権を有する神戸市に対しても、その責任追及がされて然るべきであると考えます。今後同様の事件が繰り返されることのないよう、一病院の体質の問題で終わらせることなく、行政による監督体制が強化され、実効性のある権利擁護システムを確立すべきです。これは神戸市に限ったことではなく、兵庫県や国に対しても同様であることは言うまでもありません。そして、当協会はそのための協力を惜しみません。

 さらに今回の問題は、精神障害者の権利を守るための職能団体である当協会にも道義的責任の一端があるとも考えます。協会の設立趣意に立ち返り、当協会に所属するすべての精神保健福祉士が本来の機能を発揮できるよう、関係機関と連携し、会員の意識向上に寄与していく所存です。

当協会は、誰もが安心して受けることができる精神科医療を提供し、当たり前の医療を当たり前に受けることができるよう、精神障害者の権利擁護の実効に向けて全力で取り組んでいくことをここに表明します。

2020年3月16日
一般社団法人 兵庫県精神保健福祉士協会
 会 長  北 岡 祐 子

精神科病院の医療従事者による入院患者への集団虐待事件に関する声明(兵庫県精神保健福祉士協会).pdf
この声明を基に、当協会では入院患者の権利擁護プロジェクトを立ち上げました。こちらもご覧ください

精神保健福祉士とは

精神保健福祉士とは、1997年に誕生した精神保健福祉領域のソーシャルワーカーの国家資格です。

 21世紀はこころの時代と言われています。多様な価値観が錯綜する時代にあって、こころのあり様は私たちがもっとも関心を寄せる問題の一つとなっています。
 特に、わが国では、たまたまこころの病を負ったことで、さまざまな障害を抱えた人々(精神障害者)に対する社会復帰や社会参加支援の取り組みは、先進諸国の中で制度的に著しく立ち遅れた状況が長年続いていました。近年になり、関係法の改正などにより、ようやく精神障害者も私たちと同じ一市民として地域社会で暮らすための基盤整備が図られることとなりました。
 精神保健福祉士は、精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)という名称で1950年代より精神科医療機関を中心に医療チームの一員として導入された歴史のある専門職です。社会福祉学を学問的基盤として、精神障害者の抱える生活問題や社会問題の解決のための援助や、社会参加に向けての支援活動を通して、その人らしいライフスタイルの獲得を目標としています。
 さらに、高ストレス社会といわれる現代にあって、広く国民の精神保健保持に資するために、医療、保健、そして福祉にまたがる領域で活躍する精神保健福祉士の役割はますます重要になってきています。
(日本精神保健福祉士協会HPより)

精神保健福祉士の仕事とは

一人ひとりの希望や状況をうかがいながら、一緒に解決の方法を考え、自分の力で解決できるよう支援を行います。

・精神障害のある人や、その家族が抱える生活上の悩みに対して相談に乗り、社会復帰に関する助言を行います。
・関係機関との連絡調整、各種福祉制度の案内など様々な業務を行います。
・日本には現在、健康上の問題はなくても社会的な受け皿がないために精神科病院に長く入院している人もいます。そういった人が社会復帰するための直接支援だけでなく地域への障害に関する啓発活動等も行っています。